19周年。
長いです。重々しい数字であります。19年前といいますと、私、木村なんて小学校で逆上がりの練習などしていた頃でしょうか。
それほどまでの長い時間、ここ中野の地でお酒を扱うことができたのは、歴代ここに立っていたバーテンダーたち、ボトルや食材を提供してくれる関係業者の方々、そしてなにより、ここの階段を降りてくださった一人ひとり。お客さまの皆さまがいてくださったからに他なりません。
あらためまして、すべての皆さまに御礼申し上げます。ありがとうございます!
実は私、周年記念日は初めて経験するわけですが、弊店の周年記念は毎年行なわせていただいていることは、ご存知の方はご存知かと思います。
周年といえば、1周年や5周年、10周年などなど…キリの良い数字に開催されるイメージを持たれる方もいらっしゃるでしょうが、どうして毎年祝う場所もあるのか。それはその場が、来年も続けられるという絶対的な確証なんてない、岩のような永遠を求められない場であるからです。
大企業であればその夢を見ることもできますが、街の酒場をはじめ、多くの店舗は、霧の中を進むが如き一歩一歩を重ねております。
一見すると、不安定な生き方に思えるでしょう。しかし我々は、だからこそ。そうでありたいからこそ、こうした生き方を選んでいるのだ、と臆することなく言い放てます。
大きな両腕を持っていれば、さぞ多くの石を抱えられることでしょう。ですが、その中の一つひとつ、千差万別の大きさや形に、目を向けることができるでしょうか。真摯に向き合えるでしょうか。
我々は、真摯に一つひとつを眺めたい。手にとってよく観察して、理解したい。たとえ多くの方と出会えなくても、一人ひとりに、満足していただきたい。何かをいただいたら、何かを与え、気持ちよくドアを出ていってほしい。
そこにこそ浪漫があると知っているから、我々は綱渡りの1年1年を歩み続けます。1年1年を祝うのです。
19周年。喜ばしいことですが、無論、ここで歩みを止める気はございません。この命を賭せる1年は、まだまだ重ねていきたい。
これはまさに、終着のない旅路。
…しかしまぁ、たまにはこの周年記念のように、ホッとひと息つける時も必要ですよね。
というわけで、今回は旅をイメージした一杯、旅人(たびうと)を創作させていただきました。
出先に携帯しやすい銅マグ、入手しやすいオレンジとジンジャー。ベースのバーボン…は、お酒好きの皆さまなら、当たり前のように旅先に持ち込まれることでしょう。
暖かみと爽快感のある一杯で英気を養ったら、また、次の一歩へ。
この一杯が、皆の旅路を祝福する祝い酒となることを、願っております。